2014年大会からコースが一部変更され、より走りやすくなった長野マラソン。
アップダウンが比較的少なく、スタート時の気温も低めで、エイドや距離表示などの大会運営がスムーズなのが魅力です。
ボランティアスタッフや沿道の応援が温かいアットホーム感もある一方、制限時間は5時間と一般的な市民マラソンよりも短めで、エイドの給食に地元特産品などはなく、エネルギー補給ゼリーが用意されているなど硬派な印象もあります。本気でマラソンに取り組むランナーにこそ、おすすめしたい大会です。
今回は長野マラソン出場歴6年のライターが、5kmごとのコース紹介、走った感想をお伝えします。
ランナー/島田浩美
- ランナー歴:6年
- 自己ベスト:3:30:18(第21回長野マラソン)
- 初マラソン:4:40(第15回長野マラソン)
スタート地点(長野運動公園)
スタート地点は長野市陸上競技場前の道路上。約1万人が一斉に走るとあって混み合うため、余裕をもった集合で準備運動を。トイレは何カ所か設置されていますが、いずれも行列になるので早めの利用がおすすめです。
ただし、スタートブロックの整列に間に合わない場合は、諦めて沿道のトイレを利用するのも手。大会本部が設営した仮設トイレや公衆トイレ以外に、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアなどの店舗がトイレ提供を約束しており、私設でトイレを提供している企業もあります。
荷物預けは8:05まで。スタートブロックへの整列は8:15までです。毎年天候が変わりやすく、土地柄、朝のスタート時は冷え込みますが、天気がよい日は徐々に気温が上がることも。2019年のスタート時(8時30分)は10.0°Cと、やや肌寒さを覚える気温でした。
整列からスタートまでの待機時間は長いので、天候次第では防寒用の合羽等を用意しておくことがおすすめ。私は雨天時は透明な大きめのゴミ袋に顔と手を出す部分にだけ穴を開けた簡易ポンチョを作り羽織っていますが、曇天だった2019年は走行中に着脱できるアームカバーを利用して防寒しました。また、手先や足先にソフトワセリンを塗っておくと防寒対策に。さらに、擦れやすいところにもソフトワセリンを塗っておくと傷ができにくくなります。
なお、スタートしてから最後尾ランナーがスタートラインを過ぎるまでは、10分ほどかかることも。そのため、身体を冷やさないよう待機中にウォーミングアップをしておくことも大切です。
スタート~5km
8:30にスタート。約1万人が一斉に走り出すので、最初はもちろん大渋滞しますが、焦らずに進みましょう。スタートから1.5kmは直線で、多少の上り坂を経て左折後、長野大通りの5km地点までは声援も多いエリア。混雑はしばらく続くので、アップのつもりで焦らず流れに身を任せ、淡々と進むのがよいでしょう。曲がり角では接触に注意。
5km地点で初めての給水所が現れます。かなり混雑しますが、いくつも給水テーブルがあるので、最初のテーブルで取れなくても焦らず次のテーブルへ。水とスポーツドリンクがあります。
給水のポイントは、紙コップの飲み口を片手でつぶして一口分くらいのスペースを作り、少しずつ飲むこと。以前に一緒に仕事をしていたSWACの嶋原清子さん(2大会連続アジア競技大会女子マラソン代表)から教わったテクニックです。
飲んだ後の紙コップは必ずゴミ箱へ。ゴミ箱もいくつも設置されているので焦らないように。
5〜10km
長野大通りを左折し、善光寺までの約300mの上り坂は最初の踏ん張りどころ。沿道の応援を励みに頑張りましょう。反対車線は車が通行できるようになっているので道幅がやや狭くなりますが、焦らないように。コース最高地点の善光寺前の大門交差点では、ときどき善光寺に向かってお辞儀をしているランナーの姿も見られます。ただし、急に立ち止まると後続のランナーと接触してしまう可能性も。そこで、私は心の中で手を合わせるようにしています。ランニング中は思いの外、不測の事態にすぐに対応できないため、お互いに配慮しましょう。
善光寺の表参道にあたる中央通りの下り坂は、もっとも沿道の応援が多いエリア。長野マラソンのハイライトゾーンともいえます。声援に高揚し、ちょうど体も暖まって走りやすくなるためオーバーペースになりがちですが、道幅が狭いので混雑に注意しながら走行を。下りでスピードをアップして時間を稼ごうと思わず、ペースを保つことが大切です。
石畳を下りきると少しずつ混雑が緩和され、余裕が出てきます。
中央通りを走り終え、右折してバスターミナル方面に向かうと少しずつ応援が落ち着き、国道117号とぶつかって左折した先からはさらに道幅が広がって、周囲のランナーとのスペースに余裕が出ます。跨線橋(線路を越える橋)の上りの傾斜はややきついのですが、ペースを乱さないように。ちなみに私はいつも、上りは前方のランナーの足もとを見て「上り坂であることは気のせい」と思い込んでいます(自称「うつむき走法」。かなりおすすめ)。
荒木交差点を左折した直線も沿道の応援が多いエリア。ビッグハット(大会前日の受付会場)前で約10kmを迎えます。
10~15km
ビッグハットを過ぎると市街地から遠ざかり、片側一車線の道に。住宅街が並ぶ地元感あふれる雰囲気のエリアになります。次第に見えてくる紅白の煙突は13km地点の清掃センター。ここまではゆるやかなカーブがあるほぼ平坦な道で、清掃センターから犀川沿いの堤防道路まではわずかながら坂道を上ります(この先も2カ所、堤防道路に出るコースが出てきますが、いずれも微妙な上り坂で次第にきつくなってきます)。堤防道路を約1.5km走り、15km地点の落合橋で堤防道路を離れます。
15~20km
15kmからは直線コース。17km地点のエムウェーブで折り返し、19km地点まで往復約4kmの対面式のコースです。すでに折り返しているランナーが道路の反対側を走っているので焦りを生じやすく、長く感じるうえに道幅が狭いのでやや混雑し、走りづらくもありますが、マイペースを心がけてエムウェーブをめざしましょう。この直線上もかなりの応援があります。
小さなアップダウンがあるエムウェーブを周回して折り返し。エムウェーブの沿道の大声援にもかなり背中を押されます。エムウェーブ出口の給水所には、バナナや饅頭の補給食があります。
対面式コースが終わる19km地点から中間点(21.0975km)の五輪大橋料金所までは、約2kmの長い上り坂。次第に道路も左側に傾斜して走りづらいうえに後半の上りがかなりきついので、頑張りどころです。毎年、坂の途中にスポーツ写真サイト「オールスポーツコミュニティ」の写真撮影が行われるポイントも。
ちなみに以前、前述のSWAC・嶋原清子さんから「フルマラソンでは中間点が中間ではなく、30kmが中間だと思うと後半が楽」とアドバイスを受けたことから、私はいつも中間点の通過時は「まだまだ半分まで来ていない」と自分を奮い起こしています。
20~25km
中間点を過ぎて下り坂となり、約23km地点で折り返す往復約4kmの直線コース。途中の給水所でバナナや饅頭の補給食があります。平坦で道幅が広く周囲の景色を見渡せる反面、なかなか自分のスピード感が感じられず、見通しがよいのでコースの先まで眺められ、折り返しのランナーもよく見えるのでまだまだ走るのだと思うとやや心が折れそうになりますが、ここも我慢のしどころ。
25.1kmのホワイトリングの給水所ではエネルギーゼリーの提供があります。疲れていたり指先が寒さでかじかんでいるとゼリーの蓋をなかなか回して開けることができないので、その場合はボランティアの方に開けてもらいましょう。
25~30km
ホワイトリングを経て千曲川沿いの堤防道路へ。この微妙な上り坂が疲れた体に地味にダメージを与えます。堤防道路からは急に応援が少なくなり、いよいよ自分との本格的な戦いの幕開け。ただし景色が開け、天気がよいと正面に残雪の北アルプスを望むことができる絶景ポイントでもあります。
1kmほど走って更埴橋を渡り、反対岸の堤防道路へ。ここから松代大橋の下をくぐるまでの約2kmの堤防道路は応援も少なく異様に長く感じますが、気持ちを奮起させて頑張りましょう。
通常、給水所ではスポーツドリンク→水の順番で提供されますが、28.2km地点の給水所は水とスポーツドリンクの提供順が逆になるので要注意。松代IC近くの六文銭のマークがある隧道(高速道路下)の先を右折し、30km地点を通過する上り坂も非常に体にダメージを感じますが、もはや頑張るしかありません。
ここには毎年、松代ゆかりの真田家の仮装をした応援団やオカリナを吹くグループがいるので励みになります。
30~35km
高速道路に沿って小刻みなアップダウン(通称「ふたこぶラクダ」)の繰り返し。普段はなんともない上り坂が異様に脚にダメージを与えてきますが、腕を振って前傾姿勢でなんとか乗り越えましょう。隧道(高速道路下)を経て再び堤防道路に出ると32km地点に。最後の堤防道路への上り坂です。ここを乗り越えるといよいよ残り10kmに。堤防道路に入ってすぐの地点には消防団のラッパ隊の応援があります。
残りジャスト10km地点には、公式テーマソングを歌う「the Canadian Club」の特設ステージがあり、演奏に励まされること間違いなし。ただし対岸にはすでに先を行くランナーの姿が見え、私は毎度、気が滅入るので見ないようにしています。34km過ぎの岩野橋を渡って対岸の堤防道路に出ると、いよいよ35km地点です。
35~40km
35kmから先の約4kmの堤防道路が大抵向かい風で、天候によっては風と寒さとの戦いに。途中、フィニッシュ会場の長野オリンピックスタジアムが見えてきますが、一向に近づかないどころか次第に離れていくルートなので心が折れそうになります。覚悟して臨みましょう。
約37km地点の長野県消防学校の建物に「残り5km」の幟が掲げられているので、一気に気合が入ります。さらに次第に対岸で歌う「the Canadian Club」の声が聴こえてきて、「さっきまであそこにいたのにここまで来たんだな」とやや感慨深くなります。とはいえ、案外まだまだ堤防道路が続くので精神的なダメージが蓄積されますが、沿道の声援を励みに頑張りましょう。
40km~フィニッシュ
39kmあたりで堤防道路を左折し、いよいよフィニッシュの長野オリンピックスタジアムまでは南長野公園通りの約3kmの直線に。前半は道路の傾斜と微妙な上りが本当にきついのですが、最後の踏ん張りどころ。沿道は大声援で、長野オリンピックスタジアムの建物が徐々に大きく見え、いよいよフィニッシュ間際のムードが高まってきます。
41.1kmの最終収容関門を過ぎ、左折した先が長野オリンピックスタジアム。手前の道はやや砂利道になっているので滑らないように注意を。
スタジアム手前で42km地点を示す表示があり、芝生が広がるスタジアム内へと入ります。ラストはトラック上を約200mのラン。大勢の観衆やボランティアが温かく迎えてくれるので、腕時計を見たい気持ちをおさえ、両手を上げて笑顔でフィニッシュしましょう!
その後はボランティアの高校生たちにメダルとタオルをかけられ、おしぼりをもらい、おにぎりとスポーツドリンクを手渡されます。スタジアムを出てすぐにある芝生エリアは休憩ポイント。その先に荷物受け取りと更衣室があります。